『価格にふさわしいセルフイメージをつくる』ためのヒントについて、お伝えしたいと思います。
前回の動画では、値上げをした教室の先生のほうが、その後の教室経営がうまくいきやすいケースが多いというお話をしました。
ただし一方で、実はこういうケースが実際にありました。
それは、私のクライアントであるある教室の先生の事例です。
あるとき、生徒の一人から「今月でやめます」という、退会の申し出がありました。
急な報告だったため、先生はとても驚かれたそうです。
というのも、先生ご自身の感覚では、その生徒は毎回のレッスンをとても楽しそうに受けており、出席も安定していたからです。
また、その生徒とは和気あいあいと会話ができ、良好な関係を築いていると先生は感じておられました。
ですから、その生徒はむしろ長く通ってくれそうだという印象を持っていたそうです。
退会理由に潜む“真の原因”とは?

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皆さまも、長く続けてくれそうだと感じる生徒の“雰囲気”を受け取ることがありませんか。
表情ややり取りの様子から、「この子は続けてくれそうだ」、「もしかすると続かないかもしれない」と感じる瞬間があると思います。
先ほどの先生のケースで退会を申し出た生徒は、どちらかといえば長く通ってくれそうだと感じていた生徒でした。
そのため先生は「どうしてやめるのだろう」と不思議に思い、理由を丁寧に尋ねました。
すると生徒は「経済的な事情で、辞めさせていただきます」と答えました。
それを聞いた瞬間、先生の頭に浮かんだのは「値上げがまずかったのだろうか?…」という考えでした。
前回の動画でもお話ししたとおり、値上げのタイミングが最後の後押しとなって退会につながるケースは、過去にも実際にあります。
しかし今回のケースは、値上げのタイミングではありませんでした。
先生が値上げを実施したのは、退会の申し出よりも約半年前でした。
つまりその生徒は、値上げ後の価格で半年ほど通い続けていたのです。
しかも、その間も生徒はレッスンを楽しみ、真面目に通っていました。
したがって、表面的には退会の気配はほとんどなかったと言えます。
そう考えると、本当に退会理由が経済的事情だけなのかどうか、私には疑問が残りました。
「値上げが悪かったのでは」と感じる心理

もちろん、真の理由は本人にじっくり話を聞かなければ分かりません。
そして今回の動画でお伝えしたいのは、生徒がやめた真因の追及ではありません。
ここまでを整理すると、退会の場面で生徒が「経済的事情です」と述べたのは事実です。
しかし、私が不思議に感じたのは、その言葉を聞いた瞬間に先生が「値上げが悪かったのだ」と原因を値上げに直結させた点です。
もし値上げが主因であれば、多くの場合は値上げのタイミングで退会が起こります。
私がこの話を伺って感じたのは、先生ご自身のどこかに「いまの値上げ後の月謝は、自分が提供している価値に見合っていないのではないか」という思いが、かすかにでも存在していたのではないかということです。
なぜそう感じたのかと言えば、端的に言って、お金は自己評価の投影だと私は考えているからです。
「価格」という言葉は、裏を返せば「その価に格(クオリティ)が伴っているか」を問う概念でもあります。
すなわち、価格とは「その値段に見合う価値を自分が提供できているか」を、常に私たちに問いかける指標なのです。
「お金は自己評価の投影」であるという考え方

もし先生ご自身が、値上げ後の価格が提供価値に見合っている、すなわち“価格に値する”と腑に落ちていれば、その価格にふさわしい生徒が集まり、その価格に見合う収入が自然と得られます。
逆に、どこかで「自分のレッスンはその価格に値しないのでは」と感じていると、不思議なことに集客や収益に滞りが生まれます。
これは私自身の長年の観察からも実感していることです。
どれだけマーケティングを整えても、内側のメンタリティが「価格に値する」という確信と一致していなければ、成果に差が生じます。
具体的には、SNSで大量のフォロワーを集め、日々発信し、レッスンの案内を行い、ランディングページを作り込んでも、同じ施策で片方の教室は生徒が集まり、もう片方は集まらないということが起きます。
その差を生む大きな要因の一つが、「自分はその価格に値している」という内的な確信の有無だと私は考えています。
このように、売上や収入――すなわちお金――は自己評価の投影であり、言い換えれば自己肯定感の現れでもあります。
自分に対する評価が高ければ、その分だけ適正な対価を受け取りやすくなります。
反対に自己評価が低ければ、受け取る金額も小さくなりがちです。
そこで今回のポイントとして、ここからはご自身の評価を高め、“自分を格上げする”ための三つのポイントをお伝えします。
最初に全体像を申し上げると、第一に「レッスン周りを格上げする」。
第二に「自分はすごいんだ、と認める」。
第三に「いまのあなたのままで、すでに十分に価値があると受け入れる」。
それでは順にご説明します。
一つ目のポイント:レッスン周りを格上げする

まず一つ目の「レッスン周りを格上げする」についてです。
私は昔、学生時代に飲食店でアルバイトをしていました。
その後フリーターの時期もあり、通算で五年ほど同じ店で働きました。
そのお店であるとき、僕は店長から、「お店には三つの魅力が必要だ」と教わりました。
その三つとは、第一に商品の魅力、第二に人の魅力、第三に空間の魅力です。
飲食店で言えば、料理や飲み物といった“商品”は、美味しさや見た目の良さ、あるいは価格の魅力を備える必要があります。
とはいえ、商品の魅力だけを磨けばよいわけではありません。
そこで重要になるのが二つ目の“人の魅力”、すなわち接客です。
お客様への接し方が、店の価値を大きく左右します。
そのお店では、接客についてもかなり厳しく指導されました。
服装の整え方や歩き方、言葉遣いなど、細部に至るまで徹底して求められました。
そして、飲食店の場合は、お客様がそのお店に滞在して、そこで食べたり飲んだり、さらには友人同士で談笑をしたりするわけですよね。
ですから、そのお店の店内の空間や雰囲気づくりというのも魅力の一つとして非常に重要なんです。
これが三つ目の“空間の魅力”だったわけですね。
それに関しては当然のことながら、やはり清潔感があるとか、掃除が行き届いているといったことが大切になります。
さらには、そのお店の雰囲気に合った内装にしておく必要がありますし、実際に飲み物や食べ物を提供する際に使うカップやお皿といったものも、空間の魅力の一部として考えられていました。
教室経営にも通じる「三つの魅力」

このように、三つの魅力を高めることがお店を繁盛させるうえで大切なのだと、私は若い頃に店長さんから教わったわけです。
今、私は教室の先生方の教室経営をサポートしていますが、先ほどの飲食店における「三つの魅力」というのは、教室経営にも置き換えられると感じているんです。
まず「商品の魅力」についてですが、教室の場合の商品はレッスンですよね。
つまり、より良いレッスン、より楽しいレッスン、より分かりやすいレッスンによって、生徒がしっかりと技術を身につけ、上達していく。
それこそが「商品の魅力」になると考えています。
次に「人の魅力」。これは先生ご自身の魅力です。
人間的な魅力、いつも親切で誠実に接してくださるとか、本当に優しい声をかけてくださるといったことです。
あるいは、いつもきれいで、おしゃれで、かっこいいといった点も先生ご自身の魅力になります。
そして三つ目の「空間の魅力」。
これは教室そのものの魅力になりますよね。
ここで大切なのは、レッスンそのものだけでなく、人の魅力や空間の魅力を「格上げ」するという発想なんです。
レッスン周りの“格上げ”という発想

例えば、大学生が夏休みにサークル活動で合宿をする場合、地方の比較的安価な旅館に宿泊することが多いと思います。
一方で、都市部には「ラグジュアリーホテル」と呼ばれる高価格帯のホテルもあります。
どちらも宿泊施設であることに変わりはありませんが、その従業員さんの見た目や身につけているものは大きく異なります。
旅館の従業員さんは家族経営でとてもフレンドリーで、Tシャツにデニムといった格好をしているかもしれません。
それはそれで旅館の雰囲気に合っていて良いですよね。
一方、ラグジュアリーホテルの従業員は統一された制服やジャケットを着用し、胸元には金色のネームプレートをつけている。
髪の長い女性はきちんとまとめてお団子にするなど、全体的に統一感があり、見た目からも上品さや気品が感じられるようになっています。
このように、価格帯によってサービス提供者の見た目は大きく変わるわけです。
教室の「上質化」でセルフイメージを高める

教室経営に置き換えて考えると、価格を上げていこうとする場合には、ラグジュアリーホテルのように「上質な印象」に近づけていくことが望ましいのではないかと考えます。
ですから、値上げ後の価格にふさわしい印象を与えるよう、普段より少し価格の高い服装を選んでみるのも良いでしょう。
実際にやってみるとわかるのですが、人は無意識のうちに環境に影響を受けるんです。
ですから、着ている服装や見た目がラグジュアリーで上質な感じになってくると、自然と自分自身のセルフイメージも引き上げられていきます。
つまり、レッスン周りを格上げすることで、結果的に先生ご自身の評価も高まるということなんです。
これは空間についても同じです。
ラグジュアリーホテルを参考にすると、高級ホテルほど広々としていますよね。
それはもともと面積が広いということもありますが、余計なものが置かれていないことも理由の一つです。
物が多ければ空間は狭くなりますから、教室でもなるべく物を置かないようにして、広々とした空間を作ることが大切です。
不要なものを減らし、空間を整える

長く教室を運営している先生ほど「いつか使うかもしれない」と思って、1年以上使っていないテキストやグッズを置きっぱなしにしていることも多いのではないでしょうか。
そうしたものが増えていくと、結果的にスペースを占領してしまいます。
ですから、使わないものは思い切って処分するか、少なくとも教室内には置かず、別の場所に移すことをおすすめします。
そうすることで、不要になった棚や机を撤去でき、教室に新たなスペースが生まれます。
そのようにして上質な空間づくりを進めていただくと、最も影響を受けるのは先生ご自身なんです。
なぜなら、先生が教室に最も長く滞在しているからです。
空間や身につけているものを「上質な印象を与えるもの」に変えていくと、結果として先生自身の価値やセルフイメージも引き上げられます。
そうすると、その価格にふさわしいセルフイメージを持つことができ、それに見合った生徒が集まり、それに見合った収入を得ることができるようになるのです。
これが「レッスン周りを格上げしましょう」というお話でした。
二つ目のポイント:「自分はすごいんだ」とつぶやく

次に、二つ目ですが、二つ目は「自分はすごいんだ」という言葉を繰り返しつぶやいていただくことです。
これは少し変わった方法に聞こえるかもしれませんが、ご存じの方もいるように、いわゆるアファメーション(肯定的自己暗示)という手法です。
アファメーションとは、ポジティブな言葉や自分の理想を表す言葉を実際に声に出して繰り返し発することで、その言葉を自分に信じ込ませていく方法です。
このアファメーションは、たとえばアスリートが昔から行ってきた方法としても有名です。
一例として、バスケットボールのレジェンドであるマイケル・ジョーダン選手は、試合前に「自分は最高の選手だ」と繰り返し口にして自分に言い聞かせていたと伝えられています。
また、テニスで四大大会を何度も制したセリーナ・ウィリアムズ選手は、試合中に “I am the best.” や “I can do this.” といった言葉を実際に声に出して、自分を鼓舞していたとも言われています。
このように、アファメーションは各分野の世界トップクラスの人たちも実践している、理想を実現するうえで非常に効果的な方法なのです。
脳科学・心理学が示すアファメーションの効果

なぜ効果的なのかという点は、脳科学や心理学の観点からも示されています。
まず、言葉を声に出すことで脳の前頭前野や聴覚野が刺激され、自己暗示の効果が高まり、やる気や自信の向上につながると考えられています。
心理学の面では、自分にとってポジティブな言葉を繰り返し発することで「自己説得効果」が働き、自分の口から出た言葉によって自分自身を説得していく現象が起こるとされています。
さらに「プライミング効果」により、ポジティブな言葉を繰り返すとその言葉に関連する事柄を考え始めたり、それに関連する行動が出やすくなったりします。
また「ピグマリオン効果」によって、自分にはできるという期待を自分に向け続けることで、その期待に沿った行動が促され、望む成果につながりやすくなると考えられています。
いずれにしても、ポジティブな言葉を繰り返し口にすることで、その現実が実現されやすくなるというのがアファメーションの本質です。
ここで今回お伝えしたいフレーズが「自分はすごいんだ」です。
「自分はすごいんだ」という言葉を繰り返しつぶやくことで、結果として本当に自分はすごいのだと思える現実を手にしやすくなっていきます。
「自分はすごいんだ」を繰り返す力

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先ほど紹介したマイケル・ジョーダン選手は、試合前に「自分は最高の選手だ」と繰り返し言っていたわけですが、NBAのレギュラーシーズンは約82試合ありますし、プレーオフに進めばさらに多くの試合をこなします。
つまり、途方もない回数を重ねて自分に言い聞かせていたということになります。
加えて、おそらくジョーダン選手は試合前だけでなく、普段の練習中も、練習後に体を休めているときでさえも「自分は最高の選手だ」という意識を保っていたはずです。
日々、常にその言葉をつぶやき意識していたからこそ、レジェンド、さらには「神様」と呼ばれるほどの偉大な結果を打ち立ててきたのだと思います。
このことからも、一日の中で「自分はすごいんだ」を何度も繰り返しつぶやくことを積み重ねていけば、実際に「すごい自分」へと変化していけると考えます。
言い換えれば、価格にふさわしい自分、すなわち価値に見合う自分としてのセルフイメージへと変化していけるのです。
これが二つ目のポイント「自分はすごいんだ」です。
三つ目のポイント:「そのままでいいんだよ」

そして最後の三つ目は「そのままでいいんだよ」です。
これも先ほどの「自分はすごいんだ」と同じく、アファメーションの一種です。
「そのままでいいんだよ」という言葉を繰り返しつぶやいてみてください。
では、先ほどのフレーズと何が違うのかを説明します。
生徒をもっと増やす、売上や収入を伸ばす、理想の教室経営に近づく――こうした目標に向かうとき、私たちは無意識のうちに「今よりもっと努力しなければ」「もっと成長しなければ」「指導力を上げなければ」と考えがちです。
しかし、ここには注意が必要です。
「もっと努力しなきゃ」「もっと成長しなきゃ」「指導力を上げなきゃ」という発想は、裏を返せば「今の自分は努力が足りない」「今の自分はレベルが低い」という自己イメージの反映になってしまうことがあるからです。
日本には昔から、謙遜や控えめに振る舞うことを良しとする価値観が根強くあります。
そのため、自分を低く見積もってしまう傾向が強いのではないかと、私は感じています。
これを踏まえると、「生徒を増やすにはもっと努力しないといけない」という考えは、一見正論のようでいて、「努力が足りない自分」という意識を強化し、その意識に見合った現実――つまり生徒が集まりにくい現実――を引き寄せてしまうことがあります。
「努力が足りない」という思い込みが現実をつくる

言い換えれば、「努力が足りない」と思っていると、その思いを証明するために生徒が集まらない現実を無意識に作り出してしまうのです。
一時的に生徒が増えても、ある人数を超えると不思議と離れていく、といったことが起こるのもこのためです。
ここで大切なのは、人間の脳は否定形の扱いがあまり得意ではなく、自己イメージとの一貫性を保とうとするという点です。
「自分は努力が足りない」と思っていると、脳はそれを肯定的事実として受け取り、その状態に合致する行動や選択を無意識に積み上げていきます。
だからこそ、どんな意識を日々持つかが非常に重要なのです。
実際には、多くの先生方は客観的に見ればすでに相当な努力を重ね、優れた能力を備えていることが少なくありません。
生徒や保護者、周囲の方々は、先生が思っている以上に先生を高く評価していることが多いと、私の経験上感じます。
もちろん「努力しよう」「成長しよう」「指導力をもっと高めよう」という向上心自体は素晴らしいものです。
しかし、その結果として心が重くなったり、つらさを感じたり、さらには現実として生徒や理想を遠ざける原因になるのであれば、望ましい状態とは言えません。
そこで必要以上に「自分は努力が足りていない」と思い込む必要はないのだ、ということを脳に理解させるために、「そのままでいいんだよ」という言葉を用いてほしいのです。
この言葉を繰り返しつぶやくことで、脳は「そのままでいい」「自分は今のままで十分に素晴らしい」という前提を受け入れ始めます。
すると、「そのままでも価値がある」という前提にふさわしい現実を作り出し始めます。
その結果として、生徒が自然と集まってきたり、多くの方から「素敵ですね」「すごいですね」と言われるようになったりと、「自分はすごい」という現実にもつながっていくのです。
つまり、「そのままでいいんだよ」というアファメーションを繰り返すことが、結果的には「自分はすごい」という自己認識と成果につながっていくと考えています。
これが三つ目のポイント「そのままでいいんだよ」です。
「心が軽くなる方法」を選ぶ

今回、セルフイメージを格上げするためのヒントとして三つご紹介しましたが、すべてを一度にやる必要はありません。
どれか一つで構いませんし、一つを継続して行うことをおすすめします。
私の提案としては、まず三つすべてを軽く試してみて、その中で一番ワクワクする、心が軽くなる、と感じられるものを選んでください。
結局のところ、ワクワクしたり気分が軽くなるやり方でなければ続きません。
もし三つすべてに取り組もうとして心が重くなるようなら、一つに絞って構いませんし、「心地よい」「ワクワクする」「気持ちが軽やかになる」と感じるものを一つ選んで続けてみてください。
ぜひ今回ご紹介した「自分を格上げする」方法を実践して、理想の教室経営にふさわしい価格に見合う、価格に値する自己評価を育てていってください。
今回の内容が、先生方の理想の教室経営にお役立ていただければ大変うれしく思います。
ということで、今回は「価格にふさわしいセルフイメージを作り上げるヒント」についてお伝えしました。




