今回は「失敗から学ぶ経営者としての心の強さの作り方」というテーマでお話ししたいと思います。
これまで私は、約15年にわたり、のべ2,500名を超える教室の先生方をサポートしてきました。
また、自身も起業し、さまざまな分野の経営者の方々と関わる中で、多くの学びを得てきました。
さらに、出版をされているビジネスコンサルタントやコーチの方々とも深い関係を築いており、そうした方々を間近で見てきた経験があります。
そうした経営者の中には、常に新しいことにチャレンジし、安定して成果を上げ続けている方々がいます。
もちろん、その中には教室の先生方も多くいらっしゃいます。
そうした方々に共通しているのは、「とてもタフである」ということです。
タフとは何か?介護と仕事を両立した先生の話

では、「タフ」とは具体的にどういうことか。
例えば、あるクライアントの先生は、常に安定した生徒数を維持し、業績も好調で、定期的に値上げをしながら限られた生徒数でも高収益を上げておられます。
しかし、その先生には一時期、ご両親とご主人、三人を同時に介護されていた時期があったのです。
それほどの状況にもかかわらず、土日も休まずレッスンを続け、仕事と介護を両立されていました。
介護というのは、いつ何が起きてもおかしくない大変な状況です。
それでも、その先生は私との毎月の個人セッションの約束を一度も欠かすことがありませんでした。
セッションが延期になったのは、ご両親が亡くなられたときのごく数回だけです。
そのような時でさえ、スケジュールを調整して必ず再開されました。
本当に、介護をしながらよくこれだけ働かれるなと、頭が下がる思いでした。
また、別の観点で言えば、タフな人というのは「失敗しても簡単にはめげない人」です。
実際には、そうした方々も当然うまくいかないことがあり、落ち込むこともあります。
ただ、その落ち込んでいる時間が非常に短いんですね。
このようにタフな経営者や先生方を見てきて私が感じたのは、失敗や挫折を経験しても「めげない心の強さ」をどのようにして身につけているのか、という点です。
そこで今回は、私がそうした経営者や先生方から学んだ「失敗しても立ち直れる心の強さを育てる3つの考え方」をご紹介します。
「方法」というよりも「考え方」として捉えていただくのがよいかもしれません。
1つ目の考え方:あらかじめ失敗を想定しておく

まず一つ目は、「あらかじめ失敗を想定しておく」ということです。
うまくいく経営者や先生方というのは、新しい集客方法や取り組みを始めるとき、最初から「もしうまくいかなかったらどうするか」を考えているんです。
例えば、新しい集客の取り組みを始める際、「もし成果が出なかった場合はどう行動するか」というシナリオをあらかじめ決めておきます。
プランAがうまくいかなかったら、プランBを試す。
それでもダメならプランCを実行し、それでも成果が出なければ取り組み自体を見直す。
このように、最初から複数の選択肢を準備しているんですね。
これは、小学生のときに行った「避難訓練」によく似ています。
避難訓練では、災害が起こったときにどのルートでどこへ避難するのかを事前に決めて、実際に行動に移して練習します。
それと同じように、経営においてもうまくいかない可能性を想定し、リカバリーの方法を用意しておくわけです。
そうすることで、もし本当にうまくいかなかったとしても、落ち着いて次の行動を取ることができます。
このように失敗を想定しておくことで、実際に失敗したときの精神的ダメージを小さくできるのです。
つまり、心の強さというのは「何があっても全く動じない強靭なメンタル」を意味するのではありません。
むしろ、失敗や挫折があってもダメージを最小限にする仕組みや考え方を持っている、ということなんです。
うまくいっている経営者や先生方は、そうした「心の守り方」を自然に身につけています。
あらかじめ失敗を想定して対策を準備しておけば、失敗による落ち込みをやわらげることができます。
失敗を想定することは「うまくいかせるための準備」

なお、「やる前から失敗を考えるなんて良くないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
「うまくいかないことを考えると、本当にそうなりそうで不安です」という声もよく聞きます。
でも、これは誤解です。
うまくいかないことを想定するのは、「最終的にうまくいかせるため」に行っているのです。
望む結果を得るために、あえてリスクを想定しておくということなんですね。
ですから、表面的には「うまくいかないことを考えている」ように見えても、実際には「うまくいかせるための準備」をしているのです。
この違いをしっかり理解しておくことが大切です。
以上が、1つ目の考え方「あらかじめ失敗を想定しておく」という方法です。
2つ目の考え方:失敗を失敗と思わない

続いて、2つ目の考え方です。
それは「失敗を失敗と思わない」ということです。
タフな経営者や先生方を見ていて感じるのは、周囲から見れば「失敗だな」と思える出来事でも、ご本人はそれを「失敗」と捉えていないということです。
彼らにとって失敗とは、単なる「結果」にすぎません。
つまり、「うまくいかなかった」という事実があるだけで、それに「良い」「悪い」といった意味を付けるのは人の解釈次第なのです。
失敗は、ただ起きた出来事でしかない。
それをどう解釈するかによって、その後の行動や未来の方向性が大きく変わっていくのです。
そして、その結果を「悪いこと」と解釈してしまうと、「自分はダメだ」「もうできない」と思い込んでしまい、行動が止まり、成長の機会を失ってしまいます。
一方で、「うまくいかないやり方がわかった」と前向きに捉えれば、次の挑戦への糧になります。
ですから、仮に望んだ結果が得られなかったとしても、「だったら次はこうしよう」と行動できるなら、その経験は失敗ではなく、学びの一部なのです。
エジソンの有名な言葉に「私は失敗したことがない。ただ、うまくいかない方法を一万通り見つけただけだ」というものがあります。
まさにこれは、失敗を悪いものと捉えない姿勢を象徴する言葉です。
つまり、重要なのは「出来事」と「解釈」を分けて考えること。
出来事はあくまで出来事であり、それにどんな意味を付けるかは自分次第なのです。
たとえ一見マイナスに思えることでも、「これは自分が成長するための経験だ」と解釈できれば、そこから必ず次のチャンスが生まれます。
アメリカで成功した、日本人ピラティスインストラクター

イメージ
少し余談になりますが、私の大学時代の後輩に、アメリカでフィットネススタジオを経営している友人がいます。
彼女は日本人で、渡米当初は英語も得意ではありませんでした。
それでも、今では現地の富裕層を中心に支持され、その地域で最も高いレッスン料を提示するインストラクターとして成功しています。
しかも、独立の際にはクライアントから約2,000万円の寄付を受け取ったというのです。
すごい話ですが、決して順風満帆な人生ではありませんでした。
差別的な扱いを受けたこともあり、現地で結婚と離婚も経験し、さらに日本にいるお母様の看病のためにスタジオを一時閉鎖し帰国したこともありました。
それでも、彼女はこう言います。
「自分の人生はずっと右肩上がりだ」と。
私は尋ねました。
「離婚やお母さんの死など、辛いことがあった時は落ち込まなかったの?」
彼女は答えました。
「もちろん落ち込んだよ。でも同時に、『これでまた成長できる』『これからもっと良くなる』って思うんだ。だから、右肩上がりなんだよ」と。
この言葉を聞いたとき、本当に心から感動しました。
おそらく彼女にとっては、「ネガティブな出来事」でさえ、自分を成長させるための大切な機会に変換されているのだと思います。
そしてその考え方が、無意識のレベルにまで定着しているのでしょう。
だからこそ、彼女は困難を乗り越えながらも結果を出し続けているのです。
このエピソードが示すように、大切なのは「これで良くなる」と捉える力です。
たとえ気持ちがついてこなくても、「これで良くなる」と声に出して言ってみることをおすすめします。
心理学でも、言葉にすることで自己暗示が働き、現実の行動や結果に影響を与えることが知られています。
繰り返し言葉にすることで、少しずつ気持ちが整い、思考も前向きになっていきます。
そうやって、自分の意識をポジティブな方向に導く力こそが、うまくいく経営者に共通する「メンタルの強さ」なのです。
つまり、2つ目の考え方のポイントは「失敗を失敗と思わない」こと。
出来事をどう捉えるかが、その後の未来を決めるのです。
3つ目の考え方:この経験は「何のために必要だったのか」を問う

そして最後、3つ目になりますが、それは「何のためにこの経験が必要だったのか」を考えることです。
失敗や挫折を経験したときというのは、必ずしも自分だけが原因ではない場合もありますよね。
そんなとき、つい「あの人のせいで」「この環境のせいでうまくいかなかった」と、誰かや何かのせいにしたくなるものです。
怒りの感情を、誰かや何かに向けることは簡単です。
ですが、そうしたときこそ考えていただきたいのが、「何のためにこの経験が必要だったのか」という問いです。
例えば、以前ご相談いただいたある教室の先生は、一時期体調を崩されて教室をお休みされていました。
体調が回復し、教室を再開しようと思われたとき、なぜか以前のように生徒が集まらなくなったとご相談くださったのです。
私はその先生に「先生は、なぜ体調を崩して教室を休む必要があったと思われますか?」とお尋ねしました。
先生はしばらく考え込まれたあと、こう答えられました。
「今までは、生徒さんが希望されれば、たとえ自分の休みの日でもレッスンをしていたんです。だから、休みというのは“たまたま予約が入らなかった日”でしかありませんでした。その結果、休みがなくなって働きすぎ、体調を崩してしまいました。きっと、働き方を見直しなさいというサインだったんだと思います。」
それを聞いて、私は改めてその先生に尋ねました。
- 「先生が教室を始められたのは、何のためだったのでしょうか?」
- 「どんなレッスンやライフスタイルが理想ですか?」
- 「日常の中でどうやってご自身の時間を確保していきたいですか?」
そんな問いかけをしながら、理想のあり方を一緒に明確にしていきました。
この先生のケースは、これからの理想的な人生や仕事を見直すタイミングだったのです。
そのために、体調を崩すという経験が必要だったのかもしれません。
本来であれば、見直すべき時期に来ていたにもかかわらず、生徒が来るからと後回しにしていた。
だからこそ、体調を崩すという出来事を通して、「もう後回しにせずに、自分の人生と教室経営を見直しなさい」というメッセージを受け取る必要があったのだと思います。
このように、「何のためにこの経験が必要だったのか」と考えることで、失敗や挫折の中から自分の本質的な課題や生きる目的を見い出すことができます。
そして、自分の目的に沿って、もう一度人生や教室経営を再構築することができるのです。
これは、マーケティングの改善や集客の工夫よりも、はるかに大きなインパクトをもたらします。
未来に視点を向ける問いが、心を強くする

ここで大切なポイントが2つあります。
まず1つ目は、「なぜ」ではなく「何のために」と問いかけることです。
「なぜ」という問いは、原因追求で終わってしまい、過去に視点が向いてしまいます。
一方で「何のために」という問いは、未来に視点を向ける力を持っています。
「なぜ体調を崩したのか」と問えば、「休みなく働いたから」という原因しか出てきません。
しかし、「何のために体調を崩す経験が必要だったのか」と問えば、「自分の働き方を見直すため」という未来に向かう答えが出てくるのです。
過去にばかり視点を向けて生きるのは、車を運転しながらずっとバックミラーを見ているようなものです。
それでは危険ですよね。
やはり前を向いて、未来の方向を見ながら運転することが大切です。
ですから、未来に焦点を合わせる「何のために」という問いかけを意識していただきたいのです。
自分の人生を自分でコントロールできる感覚を育てる

2つ目のポイントは、この問いを持つことで「自分の人生を自分でコントロールしている」という感覚が育つことです。
例えば、生徒が減ってきたという相談をよくいただきます。
その理由として「少子化だから」「物価が上がって習い事にお金をかけられないから」とおっしゃる先生もいらっしゃいます。
確かにそれも一因ではあります。
ですが、もしそれが本当の原因だとすれば、同じ地域・同業のすべての教室が同じように生徒数を減らしているはずです。
しかし実際には、同じ環境下でも生徒が増えている教室もあります。
この違いを生むのは、「人生を自分でコントロールしている」という感覚や信念の有無です。
この感覚を持つ人は、どんな環境であっても、自分が望む現実を創り出す力が強いのです。
外的要因を理由にしてしまうと、「自分の人生は他人や環境に左右される」という信念が強化されてしまいます。
一方で、「自分の力で結果を変えられる」と信じている人は、環境の中で新しい工夫や行動を生み出します。
例えば「今は少人数でも利益を出せる仕組みをつくろう」と考えたり、「高価格でも満足度の高いレッスンを設計しよう」と発想できるようになるのです。
このような考え方の転換が、結果的に行動を生み、成果を変えていきます。
そうして実際に成果が出ると、「自分の考え方や行動次第で未来を変えられる」という確信が強まります。
その確信が、さらに「人生は自分でコントロールできる」という信念を強化していくのです。
こうして「自分で人生をコントロールしている」という感覚を持つ人は、失敗や挫折を経験してもタフに立ち上がり、望む結果が出るまで挑戦し続けます。
ですから、「何のためにこの経験が必要だったのか」という問いは、失敗から学び、心の強さを育て、望む結果を実現するためにとても大切な問いなのです。
まとめ:心の強さは「3つの習慣」で育てられる

以上が、私が経営者や教室の先生方から学んだ「失敗や挫折をしてもめげない心の強さを身につける3つの方法」です。
- 1つ目は「失敗を想定して、ダメージを和らげておくこと」
- 2つ目は「失敗したときに『これで良くなる』と言ってみること」
- 3つ目が「失敗したときに『何のためにこの経験が必要だったのか』と問いかけてみること」
すべてを一度に実践しなくても構いません。
ピンときたものを1つだけでも習慣化することで、2週間後、1か月後、3か月後、半年後、1年後と、確実にタフに変化していけるはずです。
その結果、望む成果を実現し、理想の教室をつくっていけると信じています。
この内容が、先生方がよりタフに、理想の教室を実現するためのヒントになれば嬉しく思います。




